皆さんが警察犬と聞いて思い浮かべるのは、シェパードだと思います。
正式にはジャーマンシェパードで、『ドイツの牧羊犬』の意味を持ちます。
警察官とタッグを組み、犯人逮捕や捜索に貢献する姿は、とても格好が良いですよね。
好きな犬が人の役に立つ仕事をしている姿を見るのは、とても誇らしい事だと思います。
ところで、ボーダーコリーは、警察犬にほとんど居ません。
実は、日本警察犬協会が決めている7種類の犬種に、ボーダーコリーは入っていないのです。
「能力的に優秀な犬だし、シェパードにだって負けないよ!」
と、無闇に対抗意識を燃やしている方も居ませんか?
「一番賢い犬種なのに!」
って…私はそうでした(笑)
同じ牧羊犬なので、何か負けられない意識が働くのでしょうか?
しかし、ボーダーコリーが警察犬にはほとんど居ないのは不思議ですね。
なぜ、ボーダーコリーが警察犬に選ばれていないのでしょうか?
それでは、その謎を解説していきましょう。
警察犬に指定されている犬種
警察が飼育管理・訓練を行っている『直轄警察犬』に、ボーダーコリーは居ません。
正確には『成れない』のです。
また、一般の訓練士が飼育管理・訓練していて、審査に合格した犬を『嘱託警察犬』と言います。
こちらには、少ない数ながらボーダーコリーが居るようです。
そして、日本警察犬協会が指定している犬種が、以下の7種になります。
犬種名 | 概要 |
ジャーマンシェパード |
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ラブラドールレトリバー |
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ゴールデンレトリバー |
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ドーベルマン |
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エアデールテリア |
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ボクサー |
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コリー |
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どの子も、穏やかさや従順さに優れた性格を持っていますね。
この辺りが、警察犬に求められる資質なのかもしれません。
警察犬とはどんな犬なのか
それでは、警察犬とはどの様な犬なのかを説明します。
一般的には、犯罪捜査などの警察活動に適するように、『警察が飼育管理・訓練している犬』を総称してこう呼びます。
よくテレビ番組やニュースなどで、見た事があるのではないでしょうか。
実は、この様な犬には『警察犬』と『警備犬』の2つに、役割が分かれています。
主な違いを以下にまとめました。
所属 | 主な現場 | 主な役割 | |
警察犬 | 警視庁_刑事部鑑識課 |
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警備犬 | 警視庁_警備部 |
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この様に、より正確に『警察犬』と呼ばれる犬は、刑事部鑑識課に所属している犬、という事になります。
警察犬の仕事内容
刑事部鑑識課に所属する『警察犬』には、以下の4つの役割があります。
- 跡追及犬
- 麻薬探知犬
- 臭気選別犬
- 威警犬
この役割は、1頭の警察犬が全ての役割を担う訳ではありません。
それぞれの警察犬が、個々の力を最大限に発揮できる『役割ひとつ』に集中して訓練しています。
それでは、警察犬のそれぞれの役割を紹介していきます。
跡追及犬
これぞ、『The 警察犬』のイメージの役割でしょう。
ドキュメント番組や、ドラマなどでよく見るのが、この役割ではないでしょうか。
現場に残された遺留品から、嗅覚で痕跡を辿る役割となります。
匂いで犯人の追跡や、行方不明者の捜索を行うのです。
残された匂いを辿って、追跡や捜索を行えるのですから、凄い能力ですね。
場合によっては、山や雪の中で遭難者を探し出す事も有るのです。
救助犬としても人を助ける、とても立派なお仕事をしています。
麻薬探知犬
内村光良さんがMCを務める『The突破ファイル』の『突破税関』コーナーでよく、
「マケン反応有りました」
と言われている場面がありますね。
この『マケン』が『麻薬探知犬』です。
空港の税関などに常駐していて、麻薬の匂いを嗅ぎつけて知らせる仕事をしています。
麻薬探知犬は多くの人が行きかう中で、麻薬のごくわずかな匂いを嗅ぎ分けるのです。
麻薬の持ち込みを水際で阻止するように、日々お仕事をしてくれている犬なのです。
臭気選別犬
こちらは、あまりなじみがない役割かもしれませんね。
現場に残された遺留品などの匂いを手掛かりにするところは、跡追及犬と似ています。
そのため、混同されて認識されているかもしれません。
臭気選別犬と跡追及犬の違う所は、追跡するか、しないかになるかと思います。
臭気選別は、遺留品と逮捕された容疑者の匂いが、一致するかどうかを選別するのです。
この役割は、裁判で証拠となるほどに、とても重要。
犯人を特定する、とても頼りになるお仕事をしてくれる犬なのです。
威警犬
報道番組で、海外の仰天映像を届けるコーナーがよくあります。
このコーナーで、よく犯人追跡の場面で警察官と一緒に居るのが、この役割の警察犬です。
威警犬は犯人への威嚇や犯罪抑制を目的とした仕事をしています。
具体的には、警察官との一緒に行うパトロールです。
警察官の指示に従って、犯人無力化に力を尽くします。
警察官にとっては心強いパートナーですね。
ボーダーコリーが少ない訳
さて、ここまで警察犬の仕事内容を見てきました。
では、ボーダーコリーには、この様な仕事は難しいのでしょうか?
ボーダーコリーは牧羊犬として素晴らしい能力を持っています。
また、全犬種で一番と言われるほど、賢い犬種です。
しかし、警察犬は嗅覚作業を主体とされるため、牧羊犬と求められる能力が違います。
警察犬には、知能や運動能力だけでない能力が求められるのです。
その能力とは、服従心や作業欲、および優れた嗅覚など多くあります。
特に、服従心はボーダーコリーにとって大きな壁になっているかもしれません。
その原因は、ボーダーコリーの知能の高さに有るのです。
もしかしたら
「知能が高ければ良いんじゃないの?」
と、思った方も居たかもしれません。
しかし、ボーダーコリーはその知能の高さゆえに、場合によってはパートナーの上に立ってしまいます。
ボーダーコリーとしっかりした上下関係を築くのは、意外と難しいのです。
また、ボーダーコリーは遊び大好きな、やんちゃっ子です。
オン・オフの切り替えが激しく、待機の多い仕事には向いていないのかもしれません。
その点、日本警察犬協会が指定している犬種は、おおむね温厚で従順です。
心が広く、おおらかな犬種が多いのです。
ボーダーコリーは知能が高すぎるためか、少し無理な指示にはすぐ『無理』と判断して、拒否する事があります。
態度にすぐ出しますし、無理に言う事を聞かせようとすると、反発がパートナーに向きます。
つまり、ボーダーコリーは、規律で縛られるのには向かない、という事なのでしょう。
まとめ
- ボーダーコリーは日本警察犬協会が指定する犬種に入っていない
- 警察が飼育管理・訓練している犬には『警察犬』と『警備犬』が居る
- 警察犬には4つの役割がある
- ボーダーコリーは縛られるのが嫌い
テレビドラマなどでは、警察組織の中で自由に動く主人公がよく描かれていますね。
しかし、あれはドラマだからこそ、成立するのだと私は思います。
逆に言うと、現実にありえないからこそ、ドラマの中で主人公になれるのでしょう。
あれを現実でできるのは、よほどのバックボーンを持っている人です。
普通の人は、やはり組織の規律に従って仕事をするものだと思います。
そして、規律の中で活躍できる人と、できない人が居るように、規律の中に向いている犬種と向いていない犬種が有るのでしょう。
ボーダーコリーがボーダーコリーらしく輝ける場所は、警察組織にはないのかもしれません。
ボーダーコリーは良くも悪くも、自由を愛する犬種なのでしょうね。
遊び大好き、お転婆娘に、やんちゃ坊主。
それが、ボーダーコリーのボーダーコリーたる所以なのだと思います。
たしかに、警察犬には向かないかもしれません。
しかし、それでボーダーコリーの価値が無くなる訳でもないのです。
草原を前にしたら、我慢できずにテンション上がっちゃう。
そんなボーダーコリーが、可愛らしくてたまらないのは変わりません。
むしろ、そこで指示に従って待ってしまうのは、ボーダーコリーじゃないのです。
人も、ボーダーコリーも、自分が自分らしく居られる場所で、輝けるのが幸せなのだと改めて感じました。