北海道で、土佐犬が人に噛みつき、被害者が亡くなるという悲しい事件が発生しました。
これまでにも土佐犬による痛ましい事件は発生しています。
今回、犬には罪の意識など全くなかったのに事件後殺処分になっています。
私がこの事件を見たときに持った疑問は、
「犬にそんなに大きな罰を与えなくてはいけなかったのか?」
「飼い主としての責任はどうなるのか?」
「そもそも飼育環境は適切だったのか?」
どうしても強面の土佐犬。よく知らないと誤解をしてしまう方が多いのも悲しい現実。
正しい知識と理解があればきっとお互いが幸せな社会が築けるはずです。
この記事では、今回事件はなぜ起きたのか、土佐犬とはどういった犬なのか、土佐犬の殺処分が本当に正しい判断であったのかについてお話していきたいと思います。
事件の背景
2014年北海道の海岸を散歩していた女性が、放し飼いにされた土佐犬2匹に襲われ、波打ち際に倒れ溺死しました。
飼い主の男性は重過失致死罪で懲役2年6カ月の判決と慰謝料6300万の支払いを命じられました。
2匹の土佐犬は保健所にて殺処分されました。
ここまでを聞くと妥当な処分だと思いませんでしたか?
それどころか、6300万の慰謝料なんて払えないでしょ!と思ってしまいますよね。
ですが!こんなに単純な事件ではなかったんです!!
男性は海岸にきて周りをちゃんと確認もせず、体重50㎏の土佐犬2匹のリードを放し、女性の悲鳴を聞いておきながら、犬を連れて自宅へ戻り、犬の口についた血を拭きとって証拠を隠蔽しました。
そして女性が襲われてから3時間後、なんと自ら
「女性が倒れている」
と通報しているんです。その後の任意の事情聴取でも、
「倒れていた女性に自分の犬が噛みついていた」
と証言しています。
通報も、証言も嘘をついたのです。
初めはその証言によって被害者の夫には、体にできた傷は鳥やキツネにつつかれたと説明されたそうです。
でも、被害者の夫が知人より聞いていた、
「海岸で土佐犬を放す男性がいる」
という目撃情報をもとに捜査がされ、その後の聴取で
「1匹のリードを放したら悲鳴が聞こえ、見に行くと女性を襲っていた。もう1匹もつられて女性を襲った。」
と容疑を認め、逮捕となりました。
飼い主の悪質さが出ていますよね。
襲われている女性をすぐに助けようともせず、嘘までついて自分の罪から逃れようとしていることも悪質ですが、実は、これだけではなかったんです!!
この男性、飼い犬に狂犬病の予防接種も受けさせていませんでした。
なおかつ土佐犬を連れて帰るときに乗っていた車も車検切れだったんです。
もう開いた口が塞がらないとはこのことです・・・
ここまでの詳しい事件の背景を知ると、こんなにいい加減な人が犬を飼っていることにも驚きですが、その飼い犬が土佐犬という事実に驚きです。
土佐犬について知る
そもそも土佐犬がどういう犬か知っていますか?
もともと、四国犬と呼ばれていた犬種に
- オールド・イングリッシュ・マスティフ
- ブルドッグ
- ブルテリア
- グレートデン
を交配し、大型化させ土佐闘犬として品種改良された犬です。
つまり、人間の娯楽で戦わせるために作り出されたんです。
これだけの品種を交配させたため、土佐の名は入っているものの日本犬には含まれません。
しかし、動物愛護の普及により、全世界から闘犬文化はなくなろうとしています。
日本ではまだルールを設けつつ闘犬大会を開催している地域もありますが、海外では法律により禁止されているところがほとんどです。
土佐犬が生まれながらに闘志しか持っておらず、凶暴というわけでは決してありません!
本来の土佐犬の性格は、ゆったりとして優しく、忍耐力がありしっかりとした訓練をすれば飼い主の指示には素直に従います。
しかし、闘犬としての気質は確かにあり、闘争心に一度火が付くと徹底的に攻撃します。だからこそ、それを制御できる飼い主の訓練も大切になります。
私自身の体験で、子供のころ母の手伝いで荷物の配達をしていた際、インターホンを押して待っていると、何か視線が・・・
ゆっくりと振り返ると、そこには音もたてず、吠えもせず、呼吸音すらさせず、土佐犬が立っていました。
幸い、しっかりとしたリードに繋がれており、私に届く距離ではなかったことと、私自身子供ながらに犬にあったら背を向けていきなり走り出したらいけないこと、大きな声を出したらいけないことの心得があったため何事もありませんでしたが、無類の犬好きの私でもさすがに恐怖でした。
飼い主が出てきて一言声をかけただけで今までの殺気が嘘のように自分の小屋へ帰っていきました。
このことからわかるように、しつけと訓練が本当に大切なんです!
子犬のころからの信頼関係としっかりとしたしつけさえすればとても頭がよく、良きパートナーになれます。
土佐犬を飼うには
土佐犬は日本では一般的には入手困難です。
時折、里親募集で掲示されていることがありますが、正しい知識もなくむやみに手を出していい犬種ではありません!
好きだけでは飼えないんです!
里親を募集している方からすれば早く決めたいのはわかりますが、うまいことを言って簡単に譲ろうとしている掲示に騙されないでください。
まず、犬や猫に対して赤ちゃん言葉を使ったり、かわいいからとつい甘やかしてしまう人はまず飼えません!飼うべきではありません!飼ってはいけないのです!
しつこいようですが、今回の事件で分かるようにいい加減な飼い主のせいで悲しい思いをするのは土佐犬なんです。
土佐犬は地域によっては「特定犬」と定め、飼うためにはルールを設けているところもあります。
成犬の土佐犬は体重が30㎏~100㎏になるとされています。
その大きさを制御できるだけの力も必要になります。
土佐犬はストレスが溜まったり、運動不足になると無駄吠えや問題行動に繋がります。
1日2回各1時間以上の散歩は欠かせません。
つまりは、まず飼い主がしっかりとしたしつけの訓練を受けることと、体力が必要不可欠なのです。
犬を飼う者の義務と責任
- 生後91日以上の犬は登録すること。鑑札が交付されるので首輪などに着ける
- 毎年1回狂犬病の予防接種を受ける。注射済票が交付されるので首輪などに着ける
- リードをしっかりつける。
- マイクロチップを装着する。
- 終生責任をもって飼う
- 他人へ迷惑をかけない
- 病気や感染症の知識を持ち、予防をしっかりする
- むやみに繁殖させない
まとめ
土佐犬による咬傷事件は多数起こっているのは悲しいですが事実です。
でも決して土佐犬が悪いわけではありません。
すべては無責任な飼い方をしている飼い主です。
今回は事件の詳しい背景を振り返りつつ
- 土佐犬が殺処分はしなければいけなかったのか?
- 土佐犬とはどういった犬なのか?
- 土佐犬を飼うにはどうしたらいいのか?そもそも飼えるのか?
- 犬を飼うための義務と責任
についてお話ししました。
今回のような事件で奪われてしまう命があることに何とも言い難い憤りを感じます。
こんな悲しい事件を防ぐためにもしっかりとした知識と理解で土佐犬のみならず犬を飼うことへの義務と責任を今一度肝に銘じましょう!
土佐犬は本来、とっても頼りになる優しくて強く、良きパートナーになれる犬種です。
でもそんな土佐犬に釣り合う飼い主になるためには人間にもそれなりの訓練と覚悟、そして体力が必要なのです。
無知な人が手を出していい犬種ではありません。
悲しい思いをする遺族、被害者、動物がこれ以上増えないよう、飼い主の一人一人がしっかりとした自覚をも持ち、動物と人間が共生できる社会になることを願います。